問題の概要
最初に、第29回実技(論述)試験問題の概要を簡単に紹介します。
相談者は59歳男性。まもなく定年を迎えるに当たり、雇用継続制度を選ぶか別の会社で働く方がよいかを悩んでいる。
問題と解答用紙は、CC協議会のサイトを参照しました(2024年5月30日アクセス)
全体的な印象
40年以上勤めてきた仕事への自負がある中、継続雇用の場合に元部下が上司になることの居心地の悪さや新入社員並みに安くなる給料への不満を先輩社員から間接的に見聞きして、相談者自身が悩んでいる印象を受けました。具体的な情報などがないまま、漠然とした不安や見通しのままで悩んでいると感じました。
私の解答と振り返り
今回の振り返りは、協議会が公表する実技の傾向を主に参考にしました。
問1 相談者が相談したい「問題」は何か
■私の最初の解答
もうすぐ定年を迎えるが、継続雇用制度を選ぶか別の会社で働くかを悩んでいる。継続雇用の場合、給料が安くて次男の教育費用が足りず、その点を妻も気にしている。また、継続雇用の先輩をみると居心地が悪そうで不満を言う人も多いようだ。自分もそうなるかもと思うとやるせない。安い給料で今の部下に使われるくらいなら思い切って別の会社で働く方がよいと考える。定年後どうすればいいかわからず悩んでいる。 |
(振り返ってみて)
協議会の実技の傾向では「気持ちの理解も含めて」と記されていました。私の解答でも「やるせない」などの相談者の気持ちに言及することはできていたと思います。
次男の教育費用の記述を第2文としましたが、逐語録の順番を踏まえると後段で記述する方がよいと考えました。
以上を踏まえて、少し書き直してみました。
■書き直し後の解答
もうすぐ定年を迎えるが、継続雇用制度を選ぶか別の会社で働くかを悩んでいる。継続雇用の先輩をみると居心地が悪そうで不満を言う人も多いようだ。自分もそうなるかもと思うとやるせない。次男の教育費用など経済面の不安もあり妻も気にしている。安い給料で今の部下に使われるくらいなら思い切って別の会社で働く方がよいとも思う。定年後どうすればいいかわからず悩んでいる。 |
問2 キャリアコンサルタントとして考える、相談者の「問題」は何か
■私の最初の解答
定年後の継続雇用の仕事内容や働き方について「居心地が悪そう」「多いみたい」などの推測にとどまっており、仕事理解が不十分。自分自身の経験・能力について「よくわかりません」「一通りの仕事はやってきた」程度にとどまり、自己理解が不十分。別の会社に就職することについて具体的に調べた形跡がなく、情報不足。子どもの教育費用などの経済的不安に対して「具体的に計算したわけではな」く、ライフプランが十分に検討できていない問題がある。 |
(振り返ってみて)
協議会の実技の傾向では「「自己理解不足」「仕事理解不足」「コミュニケーション不足」といった一般的な転職支援に留まった回答が多く、相談者の真の問題はどこにあるのか(中略)理解を深めることが必要」と記されていました。「相談者の真の問題」については「相談者の本質的な問題」とも記されていました。ただ、協議会の実技の傾向の中では、このケースの本質的な問題の手がかりになる記述は見つけられませんでした。
私自身は、あらためて考え直して、このケースの本質的な問題は、「定年後の働き方について、相談者が主体的に考えるに至っておらず、漠然とした悩みのままで具体的・能動的な行動に移っていないこと」にあるのではないかと考えました。ただし、これはあくまでも推測の域にとどまっており、逐語記録の記述のみでは根拠を示すことが困難と思います。自己理解不足などの一般的な転職支援に触れないわけにもいかず、解答欄の分量制限がある中で可能な限り文字数を絞って書き直すことにしました。
■書き直し後の解答
定年後の継続雇用について「居心地が悪そう」などの推測の域で仕事理解が不十分。自身の経験・能力について「一通りの仕事はやってきた」等で自己理解が不十分。就職を具体的に調べた形跡がなく、転職情報が不足。教育費用などの経済的不安に対して「具体的に計算したわけではな」く、ライフプランが十分に検討できていない。定年後の働き方について、相談者が主体的に考えるに至っておらず、漠然とした悩みのままで具体的・能動的な行動に移っていないという問題がある。 |
問3 上記2つの問題を合わせ、相談者を援助するための目標と具体的方策は何か
■私の最初の解答
①目標 定年後の再雇用や別会社の就職について情報を入手し仕事理解を深めるとともに、相談者の経験や能力を活かすことができるように自己理解を深めるほか、経済面を含めたライフプランを明確にすることで、定年後の働き方を主体的に決定できるようにする。 |
②方策 定年を控え継続雇用にするか別会社で働くかの悩みなどを傾聴し、受容・共感するとともに、部長としての会社への貢献などをコンプリメントしてラポールを形成する。その上で、継続雇用後の就業条件や環境について会社の制度を調べたり、モデルとなる先輩社員をみつけて話を聴くことで仕事理解を深める。相談者の了解を得て、ジョブカードを用いてこれまでの経験や能力を書き出すなどして自己理解を深める。新たな会社に関して、了解を得てジョブタグを用いるなどして、相談者の経験・能力を活かせる業種・職種をスーパー業界に限らない広い範囲から選べるようにする。また、経済面の不安に関しては教育費の見通しを含めた将来のライフプランを一緒に考える。こうしたことを通じて、相談者が自らの能力や経験を活かして、不安なく将来の選択について自立的に意思決定できるように支援する。 |
(振り返ってみて)
協議会の実技の傾向を読むと「どの事例でも当てはまりそうな記述」を避けるべきで「「相談者がこの面談で相談したいこと」に対して論理性や根拠」に基づく回答が求められると受けとめました。
私の解答を読み返してみると、文によっては一般的な記述に留まっている部分があることに気付きました。そこで、この相談のケースを反映する語句を使うように書き直すことにしました。
また、「仕事理解を深める」「自己理解を深める」などは相談者主体になっていないと評価されるおそれがあると感じたので、相談者に対してCCが支援することが明確になるように修正することにしました。
さらに、問2で記した相談者の本質的な問題(定年後の働き方について、相談者が主体的に考えるに至っておらず、漠然とした悩みのままで具体的・能動的な行動に移っていないこと)の解決につながるように修正することにもしました。
■書き直し後の解答
①目標 定年後の再雇用や別会社の就職について情報を入手し仕事理解を深め、スーパーでの経験や能力を活かせるように自己理解を深めるほか、教育費等経済面を含めたライフプランを明確にして、定年後の働き方を相談者が主体的に考え決定できるようにする。 |
②方策 定年を控え継続雇用にするか別会社で働くかの悩みなどを傾聴し受容・共感するほか、部長としての会社への貢献などをコンプリメントしてラポールを形成する。その上で、継続雇用後の就業条件や環境について会社の制度を調べたり、モデルとなる先輩社員をみつけて話を聴くなど相談者の仕事理解を支援する。了解を得て、ジョブカードを用いて経験や能力を書き出すなどして相談者の自己理解を支援する。了解を得てジョブタグを用いて、経験・能力を活かせる業種・職種をスーパー業界に限らず広い範囲から相談者が選べるように支援するほか、転職情報を提供する。経済面の不安に関して教育費の見通し等将来のライフプランを一緒に考える。以上、相談者が主体的に考えて具体的・能動的に行動し、不安なく将来の選択について自立的に意思決定できるように支援する。 |
今回の解答練習で参考にしたウェブサイト
キャリアコンサルティング協議会第29回2級過去問
同 解答用紙
キャリコンシーオー・解答例
「2級キャリアコンサルティング技能検定実技試験対策」解答例
(2024年5月30日アクセス)
註
これは模範解答ではありません。合格水準に達しているかどうかは不明です。
ご注意ください。
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